1886年スイス生まれのアロワーズ・コルバは、ドイツ宮廷での家庭教師時代に皇帝ヴィルヘルム2世へ抱いた妄想的な恋を契機に統合失調症を発症し、50年近くを精神病院で過ごしながら独自の宇宙を紡ぎ続けました。
その創作は一貫して「男女のカップル」のロマンチックな理想化であり、施設内で手に入れた包装紙などを縫い合わせた巨大な紙に、青く塗られたうつろな眼差しや、薔薇の花束のごとき豊かな乳房を持つ、演劇的で官能的な人物群を色鉛筆で活写。
最晩年には両面で14メートルに及ぶ壮大な劇場的絵巻へと発展させ、没後も伝記映画の製作やヴェネチア・ビエンナーレでの展覧を経て、現代アートの文脈で世界的な再評価の波を広げ続ける、極めて絢爛で孤高のヴィジョンを構築している。