僕ら世代の人にとっては結構衝撃のニュースでNOWHERE以来とも言える裏原カルチャーの再編という意味でも大きな出来事だが、個人的に驚いたのはHUMAN MADEが資料の中で「ブランド資産の価値が十分に利益につながっていない企業をM&Aする」と明確に打ち出していることだ。
つまり今回のアンダーカバー買収は単発の案件ではなく、HUMAN MADEによる「カルチャーIPホールディングス化」への第一歩なのだろう。
確かに、ブランド価値 > 企業価値という視点で見れば、アンダーカバーはそう見えるのかもしれない。世界的な知名度があり、熱狂的なファンがいて、30年以上積み上げてきた文化的資産がある。一方で、その価値が必ずしも利益や企業価値に十分転換されているとは言えない。
だからこそ、ブランド価値に対して割安な企業にM&Aをかけ、HUMAN MADEが持つIP展開やDTC、グローバル展開のノウハウを注入する。そうすることで、ブランドが本来持っているポテンシャルを経済価値へ変換していく。そんな戦略なのだと思う。
正直、インディペンデントで異端的なアンダーカバーが好きだった人間からすると、少し複雑な気持ちもある。
もちろん盟友同士ではあるが、ブランドとしての方向性はかなり違う。アンダーカバーの魅力は、合理性や市場性だけでは説明できない部分にあったし、インディペンデントであり続けたからこそ生まれたクリエイションもあったはずだ。
その意味では、この買収によって何かが失われてしまう可能性もゼロではない。
ただ一方で、高橋盾さんが経営から少し距離を置き、本当にやりたいクリエイションに集中できるようになるのであれば、それはそれで良い未来なのかもしれない。
そして何より興味深いのは、これを普通の投資ファンドがやるのではなく、同じカルチャーの当事者がやっていることだ。
NIGOも高橋盾も、単なる経営者ではなく、そもそも裏原カルチャーそのものをつくった当事者たちだ。だからこれは単なるM&Aというより、ある種の文化の事業承継とも言える。
今後の注目点は一つだと思う。
インディペンデントだったからこそ生まれた文化的価値を保ったまま、事業を拡大できるのか。
もしそれが実現できるなら、この買収は単なる企業買収ではなく、日本のカルチャービジネスにおける新しいモデルになるのかもしれない。