「使える」と「構想できる」の間にある溝、深く刺さりました。
自分も非エンジニア×金融出身でClaude Codeに触り始めましたが、「自分でもできるじゃん!」の成功体験をいかに早く積めるかが大切だと思います。
「freeeやMFからもAIエージェントがでる中で、自分でClaude CodeやMCPを触る必要がありますか?」
こんな質問を受けることが増えてきました。
それについて僕の持論をお伝えします。はい。長文です。
ブクマして暇で暇で仕方ないときに読むか、AIにでも要約させてください。
優秀なビジネスマンは結論から喋る、ということで結論から言うと、目的によります。
なんだよそれ、とお思いかもしれませんが、優秀なビジネスマンである僕は、この「目的による」をもう少し解像度を上げて整理したいと思っています。
AIエージェントに関わる税理士の姿には、大きく3つの層があると考えています。
(ほら、優秀そうでしょ。…いや、んなわけないですね。「大切な点は大きく3つあります」なんて、最も陳腐で最も卑下すべきビジネスマンのやり口ですよ。まあそれは置いといて先を急ぎましょう。なにせ長文なのでね)
一番下に「AIエージェントを使って記帳や決算などの作業ができる」層。
その上に「AIエージェントの仕組みを理解している」層。
さらに上に「AIで何ができるかを自分で構想できる」層。
出来合いのAIエージェント、つまりfreeeさんやMFさんが出してくるものを使うだけでも、一番下の層には到達できます。
今年中にはかなりのことが各社のAIエージェントを使ってできるようになるでしょう。
(そういえば、先日、freeeさんからもfreee Agent Hubの発表がありましたね。freeeさんリリースおめでとうございます)
目的が「AIエージェントを使って記帳や決算などの作業ができる」にあるなら、それでいいんです。ベンダーの進化を待てばいい。各社、AIモデルの発達にレバレッジを効かせて、我々の想像を絶するスピードで進化するでしょう。
ただね、目線をもう一段上げてもいいんじゃないか、だって我々専門家だもの、というのが僕の持論というか、問題提起です。僭越ながら。
自分でClaude CodeやMCPで構築してみると、二番目、つまり「AIエージェントの仕組みを理解している」とか、一番上の「AIで何ができるかを自分で構想できる」層まで辿り着ける可能性が開けます。
え?そんなところを目指していない?
まあ、そうかもしれません。
でもさ、ほら、ここまで読んだんですから、もう少しこの戯言に付き合ってくださいよ。突き放さないで。
そして、嫌々付き合ってもらってるなか申し訳ないんですが、少しだけ遠回りしますよ。
大事なのは「仕組みの理解」には2種類あるということです。
記事やYouTubeで得られる静的・構造的な理解と、実際に手を動かして得られる動的・経験的な理解です。
前者は「MCPとはこういうプロトコルで」と図解できるような知識で、後者は、触ってみて初めて掴める手応えや勘所のような、言語化しづらい知識です。
(ああ、知識は感じるものでもあったのです。いや、もともと僕たちはそうやって知識を蓄えてきたはずです。りんごをかじったときの感触、広がる甘み。夕日の美しさ、秋の風の寂しさ、そういうものは全く言語化できない、けども大切な知識です)
そして、こうした言語化された知識と言語化の難しい理解が積み重なって初めて、「うちの事務所ならこう使える」「このクライアントにはこう提案できる」という構想が生まれてくる。
AIはこれまで以上のスピードでどんどん賢くなっていくでしょう。挙動は安定し、精度も上がっていくでしょう。
だからこそ、差がつくのは「どう正確に使うか」ではなく、「何に使うかを構想できるか」に移っていきます。
(構想は発想と言い換えても良いです。昨日、AI研究会で境さんが「アイデア勝負になってきた」と仰っていたのもその端緒でしょう)
構想は、ベンダーの営業資料からは降ってきません。 構想は、自分が手を動かして「こんなことまでできるのか」と驚いた経験の先にしか、生まれてこないと思っています。
そして、ここで残念なお知らせです。
実はここまでは前置きで、ここからがようやく本題です。すみません。先を急ぎましょう。
先ほどの3つの層のうち、一番下の「作業ができる」層と、その上の「仕組みを理解している」層の間には、大きな溝があります。
出来合いのエージェントを使うだけで留まる人と、自分で手を動かして構築してみる人の間の溝です。
多くの税理士は前者に留まり、後者には至らない。
だから仕組みを知らず、仕組みを知らないから構想もできない(ええ、あえて断言しましょう)。
この溝を、僕は「埋めるべき」だと強く思っています。
なぜなら、こういう溝を当たり前に受け入れてきたことこそが、税理士業界が大きな機会を、システムベンダーや人材紹介会社、M&A仲介会社に明け渡してきた原因だと考えているからです。
(いつも仲良くしてくれるベンダーさん、紹介会社さん、M&A仲介さん、ありがとう。あなたたちのことを愛しています。だけどほら、今日は僕は本音を言うモードなのです。本音というのは、白か黒に綺麗に分かれるものではないのです。全ての事象はグラデーションで、それを正確に捉えなければ本音も現れないのです)
「専門外だから外部に任せる」という判断を、業界は何度も繰り返してきました。
会計システムはベンダーに、採用は人材紹介会社に、事業承継はM&A仲介会社に。
でも冷静に見ると、これらは税理士業務と地続きの領域です。
主導権を持って関われたはずの仕事を、仕組みを理解しないまま切り離してきた結果、業界全体の交渉力や付加価値が削がれていった。
でも、これは外部の誰かのせいではないと思っています。
僕たち自身が「専門外だから」という線引きを繰り返し、手の届く領域まで自分たちで切り離してきた。
原因は僕たち自身の思考の中にあるんだと思います。
他にも、たとえば株価算定、デュー・デリジェンス、資金調達支援など、税務・会計の知見と地続きで、専門書もツールもあるのに、「面倒だから」「専門外だから」で手放してきた領域。
一つひとつは小さな判断でも、積み重なると、業界の付加価値の総量が確実に目減りしていきます。
(そしてそれらが僕たちの存在価値とも連動しているのです。連動しているべきかどうかは置いといて!)
そして、実は、生成AIは、過去のどんな技術よりも、溝を埋めやすい領域だと思っています(ようやく話が本筋に戻ってきました。良かった)。
Claude CodeやMCPの世界は、自然言語で対話しながら構築できる領域です。税理士が日々クライアントとの対話で使っている「要件を言語化する力」「曖昧な要望を構造化する力」は、そのままAIでの業務構築に転用できます。
税理士の先生方の中には「私はITリテラシーが低いから…」と仰る方も多いです。
でも、僕は、税理士は思っている以上にITリテラシーが高い職業だと思ってますよ。
毎日パソコンを開き、会計ソフトを使いこなし、クラウドストレージでデータを扱い、電子申告をこなしている。
この日常は、他業種から見ればかなり高度な情報処理の現場でしょうよ。
AIエージェントの構築は、その延長線上にあると思っています。しかも、これらよりずっと簡単に。
だから、潜在的に、税理士はAIでの業務構築にかなり向いている職業だと思うわけです。
ああ、ようやく最初の質問に戻ります。
「freeeやMFからAIエージェントが出るのに、自分でClaude CodeやMCPを触る必要はありますか?」
記帳や決算の作業ができれば十分、ということなら、必要ありません。各社のエージェントの進化を待てばいいと思います。これまでと同じ様に!
でも、目線を一段上げたいなら。 AIで何ができるかを、ベンダーの提示を待たずに自分で構想できるようになりたいなら、クライアントに本質的な助言をしたいなら、そして何より、これからの税理士の価値を、自分たちの手で定義したいなら。
そんな質問をする前に、一度、手を動かしてみてほしいです。自分で何かが動いた、という体験を一度作ってみてください。
「あ、これ自分でもできるんだ」という驚きは、何百時間の講義や何十冊の本より、自分の中の障壁を壊してくれます。
僕の𝕏ポストや記事を読んで、AI税理士のnoteを読んで、AIインフルエンサーのYouTubeを見て分かった気になるのとは、まったく別の理解がそこにあります。
(ちょっとだけ言い訳をすれば、𝕏での情報発信も、AI研究会や各地の税理士会で続けているAI研修も、この溝を埋める一助になればと思って取り組んでいますよ。もちろん経済的な理由やインフルエンス力を上げたいという目論見もあります。どちらも本音です。本音というのはグラデーションの上にあるのです、いつだって)
業界の主導権を、自分たちの手に取り戻す、その一歩目として、構築の側に踏み出す人が一人でも増えたら嬉しいなと思っています。
そんな感じです。