顔学会で、金出武雄先生、NVIDIAの研究者の長野光希さん、Sayaを作っているTELYUKAさん、デジタルヒューマンを推進する日本を代表する会社の方々とのパネルで登壇しました。
有意義な議論、プレゼンだったのではないかと思います。
パネルの質問も考えさせられるもので自分の回答を載せておきます。
Q1. 今後5年間、デジタルヒューマンの研究開発投資は、『フォトリアルな外見の追求』よりも『人間らしい対話能力の実現』に、より重点的に配分されるべきである。
→ YES?
デジタルヒューマンの利用シーンは対話がメインであることを考えると、人間らしい対話能力を実現する一要素として、外見が含まれ、また外見の表現方法の一つとしてフォトリアリズムがあるという関係かと思います。
そもそも外見が必要なく音声だけで十分な状況や、外見があることを好まない個人はいて、また外見が必要だとしてもフォトリアルな外見が適した状況や、好む個人は限られているので、フォトリアルなデジタルヒューマンが必要な場合は限定的かと思います。
ただし、キャラクターは国の文化や個人によって好むテイストが異なり、日本のようにキャラクター文化が浸透していない国も多いので、フォトリアルな外見の方が、世界共通の身体デザインとして普及しやすいという側面はあります。
また、日本語やアジアの言語は、言語以外の情報の重要度が高いハイコンテキストな言語に分類され、言語以外の情報である、姿、声色、語り口、身振り、表情といった身体性が重視されるので、日本やアジアにおいては、デジタルヒューマンとの対話で音声だけでなく外見が必要とされることが多いかと思います。
Q2. 10年後、AIエージェントとの主要なインターフェースは、 テキストや音声のみのUIを抑え、デジタルヒューマンがその座を奪っている。
→ NO?
AIが追求する知能や思考だけでなく、人格や姿、声、感情といった人間のすべてを実現することをデジタルヒューマンと定義するなら、10年後にはデジタルヒューマンはかなり普及しているかと思います。
(※ここら辺についての詳細は
#PostDev で話しました。後ほどビデオが公開されるかと思います。)
ただし、その広義のデジタルヒューマンと人間がやりとりするインターフェースについては音声が中心になり、外見が必要かどうかは、個人の趣向や、状況次第かと思います。
また、外見が必要だとしても、フォトリアルな外見が必要な状況や、好む個人はより限定されてくるかと思います。
フォトリアルな外見は世界共通の身体デザインとして普及しやすく、また日本やアジアにおいては、外見が必要とされることが多いという点についてはQ1の回答の通りです。
Q3. 広告や接客で利用するAI生成人物には、それが人間ではないことを視聴者に明示する『ラベリング』を、技術的な実現可能性とは無関係に、法的に義務化すべきである。
→ NO
賛成・反対の立場に関わらず、法律によりラベリングの義務化やAIの禁止がされるようになるのは今後必需の流れかと思います。
例えばテレアポが今後AIで自動的に大量に行われるようになると、ラベリングの義務化やAIの禁止がされていくと思います。
しかし、これはあらゆるAI生成物に適用される危険があります。
例えば人間のクリエータを守るために創作物でのラベリング義務化や、AIの禁止がされるようになることが容易に想像できます。
現在でもAIに対するクリエータの反発は強く、今後AIが人間を大きく超えるレベルの創作物を生成できるようになると、反発が非常に強まることが予想されるためです。
これに対して法律によるラベリングの義務化やAIの禁止という形で対応をすると、AIやデジタルヒューマンの発展や普及の大きな障害になるので、自分は反対の立場です。
Q4. デジタルヒューマンの究極的な進化の先には、 スクリーンを越えて、物理的な身体(ロボット)を持つ未来が待っている。
→ YES
将来的には、物理的な身体が普及すると思います。
ただ、スマホやPC、VRなどのデバイスも残るので、デバイス上でのバーチャルな身体も必要とされ、また、ARやサイネージなど、物理とバーチャルの中間的な身体も普及して、状況に応じて使い分けられるかと思います。
また、ロボットが普及するまでには時間が必要です。
ロボットが普及するためには、家事や子守、飲食店の仕込みなどで本当に役に立つレベルの身体能力と、スマホ並の価格までのコストダウンが達成される必要があり、それには想像している以上に時間がかかるかと思います。
フィジカルAIが騒がれている現状を考えると、真に普及するまでの間に、多くのロボットが発売されて人々の期待が裏切られるということが繰り返されるので、ロボットに対する期待値のギャップを埋める意味で、バーチャルな身体に大きなチャンスが生まれると思います。
例えばディスプレイでバーチャルな身体を表示する低価格コミュニケーションロボットがヒットしたり、店頭でのサイネージによるバーチャルヒューマンも、ロボットへの期待値の高まりにより、かなり普及しやすくなるはずです。
また、ロボットよりもARデバイスの進化の方が早く、ARでのバーチャルヒューマンの方が早く普及する可能性はあります。
ロボットが普及した将来においても、ARでのバーチャルヒューマンの方がより普及している可能性も十分に考えられます。