今年も、滋賀大学大学院データサイエンス研究科で2コマの授業をさせていただきました。今回は、「モデリングとは何か」を中心にお話ししました。「現実世界の細部を捨象して手に負える範囲での理解や推論を可能にする」という意味でのモデリングは、広く言えば例えばフェルミ推定や企業の財務諸表などの形で、私たちが日々何気なく使っている生活の智慧です。にも関わらず、私は「モデリング」という技芸を体系的に学んだ記憶がありませんでした。
今回の授業では、モデリングには私たちの知識から先験的に与えるやり方(e.g., 数理モデリング)と、現実世界の観測から経験的・帰納的に得られるやり方(e.g., 統計モデリング)があり、目的に応じて組み合わせて使う必要がある、というようなことを1コマ目で説明しました。後半の2コマ目では、モデリングの目的をお客様からどのように引き出すか、さらにはモデリングの結果がどのステークホルダにどのような影響を及ぼすか、などモデリング周辺のトピックについて議論しました。
いつものように「今日の授業で、明示的には言わなかった『丸山が伝えたかったメッセージ』があるとすれば、それは何だと思いますか?」というレポート課題をお願いしました。85通のレポートをすべて読ませていただきましたがその中で、ある受講生の方は「モデルによって細部が覆い隠され、判断の妥当性が見えにくくなる」危険を言いたかったのでは、という指摘をしてくださいました。
確かにそのとおりでした。例えば、経営におけるKPIとは、細部を捨象して結果を数値として示すという意味で、モデリングに他なりません。しかし、KPIだけにフォーカスすると及川さんが著書「プロダクト倫理」で指摘されているように様々な倫理的な問題が出てきます。これは細部を捨象してしまう、モデリングの負の側面と言えるでしょう。きっと私は、潜在下にそのような問題意識を持っていて、それが授業内容に現れたものだったと思います。このように言語化してくださったことによって、私にとって重要な気づきとなりました。
その他にも、多くの示唆に富む指摘をいただきました。ありがとうございます。
皆様の2年間の大学院生活が実り多きものになりますように。