ドイツ政府が、ナイトクラブを単なる「娯楽施設」ではなく、文化的価値を持つ「音楽クラブ」として扱う法改正案を承認したという。
これはかなり大きい動きだと思う。
これまでクラブは、都市計画上、ゲームセンター、賭け屋、性風俗的な施設などと同じ「夜の娯楽施設」として一括りにされがちだった。つまり、文化というより「騒音」「風紀」「近隣迷惑」「再開発の邪魔」として扱われやすかった。
でも今回の改正案では、クラブをその枠から切り離し、「音楽クラブ」という独自カテゴリーにする。これによって、混合地域や商業地域、都市地域などでクラブが存続・新設しやすくなり、再開発や家賃高騰、騒音苦情によって簡単に追い出されにくくなる可能性がある。
背景には、ベルリンを中心に進んできた「Clubsterben=クラブ死」の危機がある。WatergateやSchwuZなど、長く街の文化を支えてきたクラブが閉鎖に追い込まれ、ベルリンのクラブ団体は、多くのクラブが存続の危機にあると訴えてきた。
ここで重要なのは、クラブを「おしゃれな遊び場」として持ち上げていることではない。
クラブには、音楽、照明、身体、ファッション、クィアな共同性、若いアーティストの実験、都市の夜にしか生まれない自由がある。劇場や美術館のように昼の制度に認められた文化だけではなく、うるさい、怪しい、危ない、説明しにくいと言われてきた場所にも、確かに文化は生まれている。
文化とは、すでに博物館に入った過去だけではない。
いま身体が集まり、音を浴び、踊り、出会い、傷つき、逃げ込み、生き延びる場所にも文化はある。
ドイツの動きは、「夜遊びを守ろう」という話ではなく、都市が何を文化として残すのかを問い直す話だと思う。
これは日本にとっても他人事ではない。
ライブハウス、小劇場、クラブ、ストリップ劇場、ミニシアター。こうした場所はしばしば「不要不急」「風紀」「騒音」「古い娯楽」として片づけられてきた。でも、そこでしか生まれない表現があり、そこでしか救われない人がいて、そこでしか続かなかった文化がある。
文化として守られるべきものは、最初から上品な顔をしているとは限らない。
むしろ社会が「これは文化ではない」と切り捨ててきた場所にこそ、都市の本当の生命力が宿っていることがある。
ドイツのクラブ再分類は、そのことを制度がようやく認め始めたニュースだと思う。
なお、今回のドイツ案は「クラブが完全に劇場・博物館と同格になった」というより、建築法上「娯楽施設」から切り離し、「音楽クラブ」という独自カテゴリーを設けるもの。業界団体からは一歩前進と歓迎されつつも、「文化施設として完全に同等ではない」という批判も出ている。だからこそ、この議論はまだ途中だという。
また、切り離される側はどうなるのか?
という問題もある。
この流れを受けて日本の音楽、パフォーマンス関係者は、インバウンドをどう取り込むかも含めて議論を始める時期ではないかと本気で思っています。
【TOPIC】ドイツ政府がナイトクラブを「娯楽施設」ではなく「文化施設」として再分類する方針を承認。
これにより開発による立ち退きからクラブを保護しやすくなり、劇場や博物館と同等の文化的価値が認められる可能性も。
世界ではクラブを“遊び場”ではなく“文化”として守る動きが進んでいる。