ANAが今日、メール問い合わせへの返信に「最大2カ月かかる可能性がある」と公式発表しました。
きっかけは5月19日から始まった国内線予約システムの大規模切り替えです。
ANAはこれまで、国内線と国際線で別々の予約システムを運用してきました。国際線はスペインのアマデウス社製システムを2015年から使用。国内線は日本で独自に開発した「エイブル」と呼ばれるシステムを半世紀以上使い続けていました。今回の切り替えは、この2つをひとつに統合する作業です。
「世界標準のシステムに合わせる」というのは、経営効率の観点からは合理的な判断です。JALは2017年に同様の統合を完了しており、ANAはほぼ10年遅れでの追随になります。
ところが、国内線の年間旅客数は約4,400万人です。これだけの規模の基幹システムを3週間かけて空港ごとに順番に切り替える間、利用者には多くの制限が同時に発生しました。
オンラインチェックインが使えないケースが多発しています。日帰り往復旅程では復路便のチェックイン画面が表示されない不具合が確認されています。プレミアムクラスにアップグレード済みの乗客もオンラインチェックインが機能しません。出発48時間前から24時間前の間は、座席指定が一切できない「空白の24時間」が発生します。コールセンターに連絡しても、この制限は解除できません。
8歳から11歳の子どもが一人で搭乗する場合も、オンラインチェックインの対象外になりました。対象となる乗客は全員、空港カウンターでの有人対応に誘導されています。
運賃体系も同時に全面変更されました。従来の運賃はすべて廃止され、「フレックス」「スタンダード」「シンプル」の3タイプに統合されています。5月18日以前に購入した航空券は、5月19日以降の便への変更が一切できません。変更が必要な場合は払い戻し後の再購入が必要で、手数料が発生します。
問い合わせが急増したのは、こうした制限が複合的に発生したためです。
ANAは6月10日時点でも、一部の空港でシステム統合が完了していないことを認めています。移行完了は「6月9日の予定」とされていましたが、今日現在でその案内はウェブサイトに出ていません。
電話はつながりにくい。メールは2カ月待ち。航空会社への問い合わせ手段が実質的に機能しない状態が続いています。
移行によって達成される便益、すなわちITコストの削減や国内外旅程の予約一元管理は、ANA側に帰属します。利用者が負担しているのは、移行期間中に発生する制限の全コストです。
フライトは待ってくれません。搭乗日は動かせません。「2カ月後に回答します」は、航空券の問い合わせに対しては機能していない回答です。
公共交通のデジタル化移行において、利用者保護の設計をどの水準で義務づけるか。今回のケースは、その問いに対して答えを示しています。