ザジ・ズー(今井桃子、西﨑達磨)と布施琳太郎の演劇『パーフェクト・ビーチ』。砂浜のイメージの反復が印象的だが、舞台となるみなとみらい周辺の横浜の砂浜は1970年代頃には港湾開発とコンテナ船の普及によって立派な港に姿を変えた。だとすれば、布施の原案にある2030年のみなとみらいの設定が70年代の横浜を舞台に展開されているように見える。近過去と近未来の横浜のイメージが妙に重なり合い、また戦争への言及から満州引き上げ組の安部公房の世界観を思わせるシュルレアルな演劇。「妙に」というのは2030年の布施の世界観は、みなとみらい開発にとって重要な横浜博覧会の開催された1989年を確実に起点にしているにもかかわらず、劇中の人物たちはまだ89年を知らない、つまり20世紀末にだけ存在した独特の21世紀への希望的な観測と祝祭感をまだ知らないから。興味深いことに、この未然の忘却が、死を登録するマッチングアプリが流通し、AI型ドローンにより人間が殺戮される2030年の世界としてのみなとみらいのメランコリックな心情とマッチする。