【トウブハコガメの色彩変異など学術的な研究ベースのものを情報共有】
トウブハコガメ (Terrapene carolina carolina) の色彩変異の多様性やなぜそのようになったのか、研究や論文にあるものからレポートを作成した。
私がざっと読んでな感じ
・生息地の環境で色が変わる(森林、日照がよくあたるところなどで色が違う個体群)
→食餌中のカロテノイド類が黄色〜オレンジ発色に関与するという仮説もあり(Moussa et al., 2018)
・他の個体群や亜種との交雑
とかが気になった。
詳細を以下を読んでね。
ソースは論文や参考文献を参照に!
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レポート:トウブハコガメ (Terrapene carolina carolina) における色彩多様性と遺伝性
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はじめに
トウブハコガメ(Terrapene carolina carolina)は、黄色・オレンジ・黒などの多彩な色彩と斑紋を示すことが知られています。このような個体差の大きな現象は「色彩多型(color polymorphism)」と呼ばれ、生態・遺伝・環境・発達など複数の要因が関わっていると考えられています(Butler et al., 2011; Kimble et al., 2014; Carlson et al., 2022; Maki et al., 2025)。
本レポートでは、文献的エビデンスに基づいて、色彩多様性の要因および遺伝的背景について考察します。
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1. 遺伝的要因
トウブハコガメの色彩変異は、遺伝的多型を基盤にしている可能性が高いと考えられています。
Kimble et al. (2014) は、東部アメリカ全域にわたるトウブハコガメ集団の遺伝構造を解析し、地理的隔離にもかかわらず遺伝的差異が弱い(すなわち遺伝子流動が広範に起きている)ことを示しました。このことは、局所集団間で色彩関連遺伝子が混合し、多様な発色傾向を維持する可能性を示唆します (Kimble et al., 2014)。
さらに Butler et al. (2011) は、形態・斑紋・DNA解析を用いて T. c. major(ガルフコーストハコガメ)と T. c. carolina の関係を調査し、両者の間に遺伝的・形態的な明確な境界が存在しないことを明らかにしました。これは、異なる地域型間の遺伝的交雑や混合が色彩多様性の背景にあることを支持します (Butler et al., 2011)。
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2. 発生・成長過程による変化
Carlson et al. (2022) によると、トウブハコガメの殻色・斑紋は加齢に伴って変化し、若齢期は明るい色調を示す一方、成長とともに暗化や黒化が進む傾向があると報告されています。このような発育段階による変化(ontogenetic color change)は、個体差をさらに拡大する要因となります (Carlson et al., 2022)。
また、Maki et al. (2025) の総説では、トウブハコガメが色彩発達のモデル生物として有用であることが述べられており、色彩の明度・彩度・コントラストが成長過程で大きく変化することが指摘されています (Maki et al., 2025)。
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3. 環境・生態的要因
色彩発現には環境条件も深く関与しています。
Edmonds et al. (2020) は、個体の生息環境(森林内の日照条件や湿度)が成長速度および甲羅表面の発色に影響することを報告しています。紫外線量や気温が異なる地域では、色素生成量や角質層の変性速度が変わる可能性があります。
また、食餌中のカロテノイド類が黄色〜オレンジ発色に関与するという仮説もあり(Moussa et al., 2018)、野外では食性の違いが色彩差の一因になるかもしれません。
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4. 自然選択・性選択・行動的要因
色彩はしばしばシグナルとして機能します。Shell colouration study (2025) によると、雄個体の甲羅色は雌に比べて赤みが強く、さらに明るい色を持つ個体は「大胆な行動特性(boldness)」を示す傾向があることがわかっています。この研究は、色彩が性別や行動特性、さらには免疫状態と関連している可能性を示唆します (Shell colouration study, 2025)。
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5. 地理的変異とクライナル傾向
Vitek (2018) は、トウブハコガメの殻形態に地理的な連続変化(clinal variation)が見られることを報告しました。これは、環境条件(気温、湿度、植生など)の勾配に応じて形質が連続的に変化する現象であり、色彩も同様のクライナル傾向を示す可能性があります (Vitek, 2018)。
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6. 遺伝性(Heritability)の可能性
色彩多様性の起源を理解するうえで、遺伝的遺伝率(heritability)の有無は重要です。
Carlson et al. (2022) は、「T. c. carolina における生涯を通じた色彩変化の遺伝的追跡研究は存在しない」と明言しています。このため、黄色やオレンジなどの色彩が親から子へどの程度受け継がれるかについては、実証的データがまだ不足しています (Carlson et al., 2022)。
一方で、発色に関与する遺伝子(メラニン、カロテノイド、プテリンなど)の多型が他の爬虫類で知られていることから(Olsson & Stuart-Fox, 2020)、トウブハコガメでも類似の遺伝的制御が存在する可能性は高いと考えられます。
しかし、この種では環境要因による表現型可塑性(phenotypic plasticity)が非常に強く、日照・食餌・発育条件などが発色を左右するため、遺伝的要因だけで色彩を説明するのは困難です。
そのため、黄色の個体が必ず黄色の子を産む、黄色×オレンジで中間色が生まれる、といった「色彩の遺伝的固定性」はまだ検証されていません。色彩の遺伝はおそらく**多遺伝子性(polygenic)**であり、複数の遺伝子の相互作用と環境修飾の結果として現れる複雑な形質であると考えられます。
今後の課題として、親子交配実験やゲノム解析による色素関連遺伝子の同定が必要です。これにより、特定の色彩傾向が遺伝的にどの程度保持されるかが初めて明確になるでしょう。
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結論
トウブハコガメの色彩多様性は、
•遺伝的多型と遺伝子流動(Butler et al., 2011; Kimble et al., 2014)
•発育過程(Carlson et al., 2022; Maki et al., 2025)
•環境可塑性(Edmonds et al., 2020)
•選択・行動的適応(Shell colouration study, 2025)
•地理的変異(Vitek, 2018)
•そして潜在的な遺伝的遺伝率(Carlson et al., 2022; Olsson & Stuart-Fox, 2020)
の複合的作用によって説明されると考えられます。
遺伝的基盤の存在は否定できないものの、現時点では「黄色の個体が遺伝的に黄色の子を必ず産む」とは言えず、環境と発達が強く影響する可塑的形質である可能性が高いといえます。
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参考文献
•Butler, J. M., Dodd, C. K., Aresco, M. J., & Austin, J. D. (2011). Morphological and molecular evidence indicates that the Gulf Coast Box Turtle (Terrapene carolina major) is not a distinct evolutionary lineage in the Florida Panhandle. PDF
•Kimble, S. J. A. et al. (2014). Unexpectedly Low Rangewide Population Genetic Structure of the Imperiled Eastern Box Turtle. PMC
•Carlson, B. E. et al. (2022). Trait Covariances in Eastern Box Turtles Do Not Support Pleiotropic. BioOne
•Maki, E. et al. (2025). Application to the Eastern Box Turtle (Terrapene carolina). PMC
•Shell colouration study (2025). Shell colouration is associated with sex, boldness, and innate immunity in wild adult eastern box turtles. ResearchGate
•Vitek, N. (2018). Delineating modern variation from extinct morphology using shells of the Eastern Box Turtle. PLOS ONE
•Edmonds, D. et al. (2020). Eastern Box Turtle Growth Patterns. HerpConBio
•Olsson, M., & Stuart-Fox, D. (2020). Genetic and environmental control of animal coloration. Nature Reviews Genetics, 21(9), 499–512.